【2018年4月12日】4月10日は「4(フォー)と10(トー)」で「フォントの日」。
これを昨年登録したアドビ システムズ(アドビ)が「#フォントの日 記念トークセッション」を、4月10日の記念日に東京都千代田区紀尾井町の「Yahoo! LODGE」で開催した。
レポート①に引き続き、その様子をお伝えする。
トークセッション「フォントの未来」では、フォントの最先端を研究する5人が集まり、AI(人工知能)やAR/VR時代に、webフォントはどのように進化していくかを探った。
登壇者は以下の通り。
・ヤフー 検索デザイン開発部 李ナレ氏
・UXデザイナーTHE GUILD 代表 深津貴之氏
・日本デザインセンター 有馬トモユキ氏
・アドビ研究開発本部日本語タイポグラフィシニアマネージャー 山本太郎氏
ファシリテーター
・&Co.Ltd代表取締役 横石崇氏
このセッションでは事前に登壇者から「キーワード」をもらいそれに沿って、トークを展開した。
◆フォントの未来と聞いて思いつく「キーワード」は
李 「コンテクトアウェアネス(世界を変える技術)」という言葉を上げた。「ユニバース」は、写植活字に移った時に生まれたフォントだ。デバイスが変われば、例えばディスプレイのおかげで使いたくなってしまうフォントというものもある。今はGIFデータによって、ユーザーのシチュエーションにあった文字を出すこともできるという考えを持っている。
有馬 暗いと太くなるとか、そういったものとすれば、アップルのアントニオ(カペドーニ)が作った新フォント「サンフランシスコ」は「II」と言った連続する文字の時は横棒が伸びるなど、状況に応じて字体を変えている。
李 今の若いデザイナーはカーニングできないらしい。というか必要ない。
山本 昔は文字幅を詰めるのは当たり前で、そのうち自動でできるようになった。イラレなんかにAI字詰めロボとか搭載されるのでは。
深津 AIでやりたいのは、過去の巨匠を召喚すること。巨匠を呼んで課題を与えれば、その巨匠が何とかしてくれる(笑)。
山本 ちょっと今の意見には反対。AIは統計的な情報を集めてできているが、過去の人が未来のものをつくることはできないから、結局、人間の手が入ると思う。
有馬 AIは基本的に、自分に都合の良いものを見られるようになる技術。
今、バリアブルで絵文字を出すと、(アニメーションのように)笑顔と泣き顔の間を100くらい作れる。何かを伝えるということでいえば、絵文字というのは可能性がある。
横石 ラインスタンプとは違う?
有馬 違いますね。文字が行きつく到達点は偏見ゼロの世界。ネットゲームで相手がナニ人かわからない状況でも通じさせてしまい、偏見なしにコミュニケーションとれるようなものができると思う。
横石 今のフォントはバイアスをかけやすい。バリアブルで、絵文字の眉毛の上げ下げなどを調節し、細かな感情を表せる。
◆技術とタイプデザイン
李 本(のデザイン)というのは美しい世界で、過去の蓄積があった。しかし、デバイスが変わって美しさが追及されていない。
山本 デバイスが変わったときにデザインのコントロールは難しい。
深津 そこは心配していない。だいたいデザインは10年ワリを食って、10年で回復する。技術革命が起こっているときは、技術がリードし、それが終わるとたたずまいがリードする。
有馬 銅板活字が出た時は美しい活字が出た。
深津 グーテンベルグのときも、美しさより、まずは種類の多い活字の方が勝ったはず(笑)。
李 漫画やイラストを描く人が使うアプリ「クリスタ(CLIP STUDIO)」は安い。そういった形で安価なものが出てきた時に美しさが追及され出すのかも。本も数百年かけて作られてきた美しさだ。
有馬 今は技術が作った美しさの“余り”を使い切れていない状態。
◆フォントの未来に期待していること
山本 オプティカルスケーリングのように、文字の大きさによって最適な形にすることが重要。海外サイトはかなり実現しているが、日本語でもできないといけない。
李 海外ではウェブフォントを使うのは当たり前、日本語ではできない。
有馬 データ量が多いので使っている部分だけ送るという技術もあるが、遅れると損害がひどいので難しい。
李 タイポグラフィーをネット上で活用するシーンを作りたい。
有馬 私が作ったのだが、文字の形を左右に振るなどができる文字を実験的に作った。これで文字が意味を持つセマンティックな状態でできる。こういうことができるのはフォントの企画を緩やかにしたものだけ。
有馬氏の作ったフォントモデル
深沢 文字をいじるには、レイテンシー(データ処理の遅延)やROI(投資利益率)の問題がある。最初にクロームの中にすべて入っているというようなフォントが必要。AIが発達したら一文字から28000字作ってくれるようなシステムが欲しい。日本語で実現するのはあきらめて、英語になるなんてこともあるかもしれない。
山本 多面的に言われていることでは、STLにしても日本語の組版は解決されていない問題がある。ウェブデザイナーも出版も人間の言葉を伝え、いかに体験をよくしていくかということが仕事。アドビでも使う環境を向上させるような努力を地道に頑張っていく。
クイズセッション「“絶対フォント感” クイズ」では、TBSの「マツコの知らない世界」で “絶対フォント感” の持ち主として出演した須藤雄生氏と、ヤフーもじもじ勉強会の田島佳穂氏が登壇した。
同セッションでは、アドビ日本語タイポグラフィの服部正貴氏が解説を務め、フォントを見分ける目利きの超人らによる、フォントトリビアやフォント当てクイズ行った。
司会はサブカルイベントで人気のDJ急行氏、セラチェン春山氏。
というわけでこのセッションは、クイズなので問題をポポポーンと、表示していき、別ページで答え合わせができるようにしたので読者も楽しんでほしい。
クイズはかなり難しく、「絶対フォント感の須藤氏も答えに詰まる」「会場のフォントマニアが正解を連発」「答えに対して参加者から見解の相違が示される」など、マニアにはたまらない超難問フォント四十八手、日光いろは坂のごとき曲がりくねったフォント奥の細道、フォント名勝負数え歌が展開された。
というわけで、クイズの問題と答えを掲載する(一部抜粋)。
第1問:このフォントは何?
答えはこれ
第2問:このフォントは何?
答えはこれ
第3問:このフォントは何?
答えはこれ
第4問:このフォントは何?
答えはこれ
第5問:このフォントは何?
答えはこれ
第6問:「貂明朝」を開発する際、ひらがなの「あ」を何種類作ったでしょう?
答えはこれ
第7問:この漢字は何画でしょう?
答えはこれ
クイズセッションで、この日のイベントは終了。
最後には「貂明朝のトート」やアクリル製の「さくら」の文字グッズが全員に配られた。トート中には各社のカタログとともに、オリジナルグッズの「フォントの日の冷マ(冷蔵庫マグネット)」が3枚入っているなど、マニアが大喜びのイベントとなった。
おそらく来年も4月10日に行われるであろうから要チェック!
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