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デジタルFabの未来を考える 福田敏也×田中浩也×四方幸子3氏のクロストークセッション 「YouFab Global Creative Awards 2015」


【2016年1月25日】FabCafeグローバルは1月22日、東京都渋谷区道玄坂のFabCafe Tokyoで「YouFab Global Creative Awards 2015」授賞式を開催。授賞式後に主催者の一人であるトリプルセブン・インタラクティブの福田敏也氏がモデレーターとなり、田中浩也氏(慶應義塾大学SFC准教授)、四方幸子氏(クリエイティヴキュレーター)のクロストークセッションが行われた。
セッションは背後の大型スクリーンに、トーク中に登場したキーワードをリアルタイムでグーグル検索しながら映し出すというFabCafeらしいスタイルで、大いに盛り上がった。

ファブカフェ授賞式 209 ファブカフェ授賞式 208

・ファブリケーションのカテゴライズに意味はあるのか?
福田 ファブリケーションの領域は多様性が増し、ぶっちゃけ魑魅魍魎とした世界になっている。これをカテゴライズできるかという議論があり、私自身も非常に難しいと思っている。審査の中では「カテゴリーを設けるのはアホ」という意見もあった(笑)。「beyond部門」という部門があったが、すべてが領域を超えており、一つの基準で決められないという声もある。じゃあ、どうしたらいいのか

田中 まったくカテゴリーなどなくても、「デザイン」という領域であれば、それらを超越したものを選ぼうとする力が働く。だから、私の意見としてはカテゴリーなんてなくてもいいと思っている。

ファブカフェ授賞式 220 (2)

四方 こういった作品や製品というのは、ある領域を「外れて、作り直して」を繰り返すものだ。マーケットの方が早いものや、そうではないものがあり、それぞれでカテゴリーを意識するかどうかは傾向が違ってくる。ただ、それぞれの境界線を離れること自体が、ファブの動きとなっているとも感じる。

ファブカフェ授賞式 208 (2)

・成熟度か未来性か?
福田 プロトタイピングに未来があるという考え方がある一方で、日常にすぐに入ってくることが可能な作品・製品の完成度や成熟度が重要という考え方がある。どちらがいいと考えるか

田中 私は最初から完成度や成熟を狙ったものより、作っているうちに、たまたま別の人が加わって「そんなはずじゃなかった」という作品になっていくのがいいと思う。
制作していくうちに、作品だけでなく「自分が変わっていった」というRPG的な面白さやストーリーがあるほうが好ましい。

四方 そうそう。やってみると意外な方向性の人と出会う。人と人とをつなぐのがファブで、それが面白い。
英国ロンドン在住の作家ウスマン・ハック(Usman Haque、http://www.haque.co.uk/)は「Thingful.net(https://thingful.net/、IoTで世界の環境計測をするサイト)」などを制作しているが、彼がやっていることは人と人をつなげて面白がる触媒を作ること。そして、ビジネス化できたら売ってしまって、また自分の好きなように違うことをするというスタイル。ある発想で人が繋がるのがファブの醍醐味。私はこれが好きだ。

ファブカフェ授賞式 213

・ファブは触媒という考え
福田
 活動も含めた人のつなぎ方に注目が集まる。触媒という言葉が出てきたが、「ファブ」という文脈のテクノロジーが触媒となって何をどうつなぐかに意味がある。アイデアと技術をどうつなぐのか、そこで新しいイノベーションや発見がある。テクノロジーそのものよりもその「コト」に意味があるのではないか。
では、そのファブは今後どこにどうつながっていくのか

ファブカフェ授賞式 211

田中 今回の受賞作でもあったが、おばあちゃんの編み物とデジタルがつながったり、さまざまなものがつながるというのは面白い。さらに漁業や農業とつながるのはどうだろう。比較的デジタルやITの恩恵を受けていないと思われる分野につながることで、ものすごい価値を生み出すのではないか。

ファブカフェ授賞式 210

四方  陶芸なんかもデジタルと出会うことで新しい可能性を生みそうだ。研究者と出会って、アートや伝統工芸が変わっていくと思う。また、ソーシャル、コミュニティとかかわることで、面白いものが生まれていく。あるソーシャルが別のソーシャルと出会うこと、データも共有し、参加することで新しいものが生まれそうだ。

・バイオロジーとファブのつながり
福田  最近、私の周りでもよくバイオロジーが話題になる。自然のアルゴリズム、特に「生」「生きる」ということからつながる触媒性に注目が集まっている。われわれの行っているファブとどこまでつながっていくだろうか

田中 ネリ・オックスマン(Neri Oxman、デザイナー、建築家、http://www.materialecology.com/)が、デジタルテクノロジーとバイオロジーを融合した作品を生み出しているように、世界中の作家の間で、情報と物質をどうつなぐかは話題になっている。
一方、日本人は発酵文化がある。「発酵ラボ(http://azundomura.net/)」などの取り組みがその一例だが、もともとある文化だと思う。

ファブカフェ授賞式 217 (2)

福田  アートはイノベーションに対してどういう役割をしていくのか。「問題提起」という役割があると思うがこれもそのひとつか

四方  アートも世界も同じで、人間を一人の人ととらえるか、人間もバクテリアのような微生物の集合体ととらえるかで、関係性が変わってくる。たい肥や水、植物、すべてがつながっていると最近よく考える。
今後、デジタルプリンタでもバイオ的なものできるようになるはず。

・Fabはどこへ行く?
福田 この先のヒントをお二方からいくつかいただきたい
田中先生の活動は発明的で世の中をどう変えていくかを重視している。これからどこへ行く?

田中  キーワードはフィールドで、それには農業も入っている。実は最近、森を一つ頂いた。修善寺にある森で、ここを遊び場として使い、なにかができるかを考えていきたい。
今のところ、フィールドを丸ごと使うということを考えているだけで、その先を考えていないのだが、活動していく中でにじみ出て行くものが作品になるということがあるだろう。
外もフィールドだが、自分の体の内部も小宇宙。そこもフィールドの対象として意識していきたい。

福田  四方さんにはファブに期待するものをお聞きしたい

四方  この世界はトライアンドエラーなので誰でも挑戦できる。
アートは一人で黙々と行うものでなく、ソーシャルコミュニケートするものになった。そのソーシャルで発見できるという点において、ファブに魅力を感じている。

ファブカフェ授賞式 220

田中  実はファブラボジャパン(http://fablabjapan.org/)に75歳の方が来ており、昆虫など虫の写真を3D化するという気の遠くなるような作業をしている。
この昆虫が他の技術者により歩き出すかもしれない。こんな出会いもある。


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