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【工夫と創造この企業】印刷可能な抗ウイルス・抗菌フィルム「HINODERIX」を開発 エイコー印刷 安部秀徳氏


【2021年3月12日】大分県のシール・ラベル印刷会社 エイコー印刷は2020年9月、抗ウイルス・抗菌のシール・ラベル製品「HINODERIX」を開発。これが大分銀行のATMタッチパネル保護フィルムとして採用された。
製品は、抗ウイルス・抗菌の両面においてSIAAマークを取得した世界初の印刷製品で、用途は、スマートフォンやタブレット端末などのディスプレイ用保護フィルム、スイッチ類の保護シール、自動ドアのタッチポイントの保護シールなど幅広い分野を想定している。

すでに大分銀行など、県内トップ企業から採用があり、昨年の発売から一気に拡販が進んだ。

実はこのお話、今話題の音声SNSアプリ「ClubHouse」で、「HINODERIX」を開発したエイコー印刷の安部秀徳氏と記者が久しぶりに対面(?)し、そこで聞いたことからインタビューに発展したもの。

開発の経緯などを、安部さんにさらに詳しく聞いてみた。

HINODERIX
https://www.eiko-printing.co.jp/hinoderix/

 

ラベル印刷と抗ウイルス

――エイコー印刷について教えてください
当社は大分県別府市にあるラベル印刷会社です。
20年ほど前からラベル印刷では、比較的数が少ないオフセット印刷機を導入し、全国に商圏を広げてきました。

――ラベル印刷は凸版が中心ですよね。オフだと仕事が多いのでしょうか
やはり、オフセットでしかできない仕事があり、それも当社でしかできない難しい技術の仕事が持ち込まれます。

――例えばどのような仕事でしょうか
オフセット印刷で写真画質を出したいというケースで難しいもの、さらには複合加工や貼り合わせ、シート貼りなど、後加工を伴う内容が多いですね。
特に難しいものでは、カードへ部分的にシールを貼ることや、今年のように急にカレンダーが変わった場合にそこへ組み込む赤い丸のシールといった訂正シールのようなお仕事もいただきます。
とにかく、他社さんがあまり手を出したがらない仕事が回ってきます(笑)。
もちろん、信頼していただいてエイコー印刷ならできるだろうというので、ご指名が来るのでありがたいことです。

――「HINODERIX」の開発にも、そういった仕事で培った技術が役立っているのでしょうか
もちろんです。
後加工など、難しい仕事をしてきたことから、今回の抗ウイルス・抗菌商品もできたと思います。
紙のラベルを使えない場所、または紙のラベルでは困るという用途でフィルムのラベルを印刷することが多く、フィルムの扱いに慣れていたことも功を奏しました。
父である社長が、20年ほど前から設備投資をしっかりしてくれていたことにも感謝しましたよ(笑)。

 

ラベル印刷会社に足りないもの?

――開発の経緯は
私が参加したホームページ運用セミナーで、効果的なブログの書き方を教えてもらったのですが、ちょうど新型コロナウイルス感染拡大が始まったころだったので、その第1弾のテーマを「抗菌や抗ウイルス」にしたんです。
抗ウイルスや抗菌のシールというものが、当時はほぼ存在しなかったようで、そのブログが「抗ウイルス シール」「抗菌 シール」などで検索すると一番上に来るようになりました。

――いきなりバズった!?
そう。これは潜在的な需要があると感じ、どうせトップになったのだから、このアイデアから仕事につながるのではないかと考えました。ブログは、紙のシールをイメージして書きましたが、これをフィルムに置き換えれば、用途が広がり、バンバン仕事が取れそうだと(笑)。でも、その時はまだ構想の段階でした。

――実際に商品化しようと思ったのは?
まあこれも偶然なんですが、コロナ禍で普及した金属製のドアオープナーがありますよね。つり革につかまったり、エレベーターのボタンを押したりもできるアレです。
あれでATMの操作をしているのを見たことがあって、大分銀行さんに伺った時、支店長に「ドアオープナーでATM操作するのは問題ないんですか?」と聞きました。
その答えが「いや、かなり問題があります」ということでした。ディスプレイ部分には、ガラスが使用されているので、意図せずに傷つく、割れるということもあるそうなのです。
「じゃあ、貼れる抗ウイルスのフィルムはがあれば使用されますか?」と聞くと「いいですね」という話になりまして、そこから一気に商品化を考えました。

――それはすごい。もう商品化ですね
いやいや、そうは簡単にはいかないんですよ。
貼るだけで抗ウイルスできるというアイデアはいいのですが、当社のような印刷会社がメーカーになって販売しようと思った時に足りないものがありました。

――それは何ですか
当社に圧倒的に足りないのは、デザイン力とWebで売る力でした。
これまでは業者間の仲間仕事や下請け仕事が多かったので、ゼロコンセプトから考えることも、直接消費者に訴える必要もなかったのです。
メーカーになるには、少なくともこの二つを何とかしないといけませんでした。

――条件を満たすために、どうされましたか?
デザインは、以前展示会で会ったデザイナーの方にお願いしました。
Webでの販売に関しては、自社のサイトを以前作成していただいた県内の会社にお願いし、アカウントの取得や広告、アマゾンへの出品までをお願いしました。

――デザイナーさんにお願いして、いかがでしたか
ブランドロゴの作成なんて、誰でもできそうなんて思っている人も多いですが、できないんですよ。
実は、この「HINODERIX」という名称も、そのデザイナーさんに考えてもらったので、コンセプト周りからすべて作ってもらったんです。

 

ブランドに込められた意味

――ブランド名に込められた意味は?
「日の出」と「マトリックス(~~を生み出すもの、~~~になるもの)」を合成した造語です。
デザイナーというのは本当にすごくて、このコロナ禍の状況を「夜の闇」と仮定しました。だから、そこに光を照らす「日の出」が必要だろうと考え、皆さんに朝が来るようにと名付けた名前です。
こんなことは、私では考えつきません。

また、デザイナーがあることで価格帯のコントロールもできました。下請けには見えなかった適正な価格が彼の助言で分かったという気がします。
基本的には、安物ではなくこの分野では最高級ブランドとして、ハンドリングしています。

――ちょっと気づいたんですが「HINODERIX」って、安部さんのお名前「ひでのり(HIDENORI)」も入ってません?
バレましたか、同業者からは「HIDENORIX(ヒデノリックス)」なんて言われてます。
実は、そのデザイナーさんの名前も「ひでのり」なんです。

――えええええ!そんな偶然が!
はい。
名前も同じで、出身大学も九州の同じ大学で、なんと年も同じでした。大学時代は会ったこともなかったんですが…。本当にびっくりですが、そんなご縁もあるんですよね。


デザイナーの中野秀則さん(左)と安部さん

――話を戻して、最高級ブランドとしての展開という話でしたが、製品の性能などは
効果が10年続くことは非常に大きいと思います。また、抗ウイルスの認定である「SIAA」が出ているシールは他にはないのです。ニスのように塗工する製品ならありますが、半年くらいしか効果がないのだそうです。
また、印刷を施せることで、デザインオフィスの一部に使う、インテリアの一部として使用するといったことが可能で、ウイルスを防ぐ効果にアートを上乗せできるのです。企業ロゴやシートの解説など1枚のフィルムですべて賄えることも特長です。

――実績は?
先ほど申し上げた大分銀行では全支店のATMへ導入されました。また大分空港でも導入され、大手の薬局、地元検察庁でも導入が確定しされています。
さらに、Jリーグの大分トリニータがこのフィルムをグッズとして採用してくれました。
こうした、大分の、この地場のトップ企業と最初に仕事をできたことは非常に大きいと感じています。

――新型コロナの感染拡大防止は、社会的なテーマですからね
国や自治体からも感染拡大防止のための補助金が出ているのですが、アルコールやソーシャルディスタンスを知らせる掲出物以外に「何をしていいのかわからない」という声も多く、そこに提案できたと感じています。

――今後、自社をメーカーとしてどう発展させていきますか
メーカーになるという一つの目標は果たせました。そしてそのことを地場で認めていただいたことで、社員も「これがうちの製品」と家族や友人に見せられるという良い効果もありました。
良い効果といえば、今春、初めて大卒の新卒採用を始めたのですが、これが「HINODERIX」の展開の効果もあってスムーズにいきました。さらにその新入社員の後輩からも「エイコー印刷に入社したい」という直接の応募もあるなど、当社の方針を理解して、一緒に仕事をしたいという方も現れたのもうれしかったですね。

当社は高卒採用もしており、社員の平均年齢は30歳くらいです。
この若い社員たちにエイコー印刷は責任を持たなければならないのですが「HINODERIX」は、当社がそれをしっかり行うための「指針」のようなものになったと感じています。

――さらにこの展開を広げていかれますか?
まず、今は「HINODERIX」を着実に販売していくいことが大事と考えており、すぐに新規の商品企画に手を付けようとは思っていません。
また、「HINODERIX」を安売りでもいいからと、必死に売り込むということもしたくはないので、お客様との関係性を大事にしながら、信頼できる代理店なども募集し、大事にブランドを育てていきたいと考えています。

いずれコロナ禍は終わり夜明けのような時が来るでしょう。その時に備え、地元の方や社員とともに、大事にブランドを育て、大きなビジネスに発展させられるように頑張りたいと思います。

HINODERIX
https://www.eiko-printing.co.jp/hinoderix/

 


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