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JAGAT大会2016 ディスカッション「差別化戦略と新たな仕事の創出」 4氏が登壇 印刷と現状の未来を語る


【2016年10月12日】日本印刷技術協会(JAGAT)は10月7日、東京都文京区関口のホテル椿山荘で「JAGAT大会2016」を開催した。
大会テーマは「印刷の再成長 市場の創出」とし、全国から会員や関係者などが参加した。

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ディスカッション「差別化戦略と新たな仕事の創出」は4名のスピーカーが登壇した。
スピーカー:
藤原洋氏(ブロードバンドタワー 社長)
井芹昌信氏(インプレスR&D 社長)
花井秀勝(フュージョン 社長)
塚田司郎(JAGAT 会長)

モデレーター:郡司秀明(JAGAT専務理事)

ディスカッション「差別化戦略と新たな仕事の創出」

最近、ドイツ人と話す機会があったが、日本の技術は世界に負けていないと感じる。しかし、先ほどの講演のようにGDPの数字が伸びていない。何かの間違いではないかと言われた
藤原 自民党の下村博文さんにもいったのだが、経済政策は経団連の人と話してはいけないし、経団連と話すから間違ってしまう。経団連に入っている企業は、日本のわずか数%、そこと話をしても中小企業や地方にお金は回っていかない。
だいたい経団連企業の社長のほとんどは任期があり、その任期の間に自社が赤字を出さないことばかりを考えている。これでは、未来への投資もしないし、日本経済がよくなるわけがない。
ITも本当に仕事をする人にお金が回っていないのだ。

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経団連企業がほとんどいない印刷業界ならば改革ができるはず。井芹さんの取り組みを教えてほしい
井芹 ネクストパブリッシングは、今までの大量印刷ではない。デジタル印刷で1冊から作成できるようになっている。しかし、これまではメインの出版に使われるビジネスモデルではなかった。
当社では4年前からデジタル印刷を使い、新たなビジネスモデルを構築。1冊から新刊を印刷している。プライベートブランドのような印刷方法だ。

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DMの業界はこの点はどうか
花井 ID付きのDMでは、POSデータで解析する取り組みなど多く手掛けている。
DMはインターネットが影響を与えた産業になっている。
米国ではダイレクトマーケティングの29%がDMという大きな割合を占め、印刷によるマーケティングが復権。なんと昨年の第3四半期ではカタログが29%も増えている。
マーケティングオートメーションを導入した企業が業績を伸ばしている。

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米国のDMはパーソナルカタログのようなものと聞いている
花井 顧客を識別し特定できるようになったので、一人ずつ異なる内容をカタログに印刷している。また、ナーチャリング(見込み客の選別)により印刷物を渡す人と渡さない人をカテゴリーできるようになった。これは印刷会社にハンドリングがゆだねられている。
あらためて紙の力は大きいと感じているところだ。

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こんな印刷業界に藤原さんの立場から何かあるか。ここがおかしいとかでも
藤原 いやいや、驚いているのは、DMが伸びているということ。確かに一般的な情報伝達と人の心をつかむ作業というのは違うと感じた。
紙は人の心をつかむ力がある。

塚田会長から今までの話の中で、何か感じたことを
塚田 セグメンテーションやパーソナライゼーションが進み。モノクロ印刷ではワンツーワンが一般化しており、カラーではそれがどこまで必要か、また品質はどこまで必要かと考えている。

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井芹 私は1冊や少部数にこだわっているわけではない。アマゾンはオンラインでつないで、自動で少部数印刷を行っている。これは少部数という部分にフォーカスすると話が非常に小さくなってしまう。1部のみの本を7万種類することもできるのだ。
お客さんはメディアにはこだわっていない、大事なのはネットワークにつながって、そこでコントロールできるということだ。

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花井 紙はROI(Return On Investment)で表される費用対効果が非常に高い。これからが本当のデジタル印刷機の導入期になる。印刷会社はデータについて理解し、ミーティングの場所に、インターネットなどのシステムに詳しいSE(システムエンジニア)などを連れて行かなくて済むようにしなければならない。

藤原 雑誌やラジオなどすべてインターネットに代替されていった。聖地と言われたテレビもすでに例外ではない。4Kや8Kの映像を、小さなディスプレイを通して見られる。
ただし、アウトプットの方法では、紙への印刷の美しさを代替できるものはない。

そうはいっても、やはり印刷はオンリーワンからワンノブゼムに変わったと感じる。それでもなお五感に訴えかけるメディアとしては、インターネットに対抗できるか
藤原 これは確認しておきたいが「紙VSインターネット」ではない。あえて言うなら「紙VSディスプレイ」という対立はある。

塚田 ちょっと言いたいが、やはり本は装丁と紙の質が大事だと感じる。今のアマゾンでやっているような1冊からの印刷は、その点がよくないと思う。
良い内容の本なら内容に合わせた立派な装丁をできるようにしてほしい。

井芹 批判を受けたようなので反論する(笑)。出版業界で何が問題かというと、多様性を持った新しい企画が通らなくなっていることだ。これを解決するする方法として、デジタルでの印刷を考えた。
1冊から出版できるのは入り口。そこから注文の多いものは、上装丁本にし、オフセットで部数を増やして印刷するというところまでを行っている。

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井芹氏が手掛ける少部数印刷による本

藤原 印刷もスケーラビリティで考えた方がいい。
長くも短くもできるということは、目的に合ったものがつくれるということだ。

花井 DMは圧着のイメージが強いが、バリアブルでカタログを印刷している。バリアブル印刷では、個人情報を扱うためセキュリティーが必要なこと、またデータを扱うためSEとしての能力がいる。
この2つのポイントは首都圏ではできている会社もあるが、地方では対応できない会社が多いように思う。
数値を読めて、買わせるデザインができるクリエイティブな人材が必要なのだが、こういった人を育てる教育が日本ではなされていない。

最後に一言ずつまとめを
塚田 本がワン・バイ・ワンになったが、やはり私は印刷の美しさにこだわりたい。いずれ印刷機が進歩し解消されると思うのだが、出版業界はリスクを負っても、素晴らしい本を出すべきだ。印刷業としては出版に協力していくことが必要だと思っている。

花井 当社は代理店との取り引きはなく、ほとんどがユーザーと直接取り引きだ。代理店は結局、仕事を丸投げして利益だけ取っていくので、ほとんど意味がない。ユーザーと直接話し合うことが大事だと感じる。

藤原 印刷業界について気に入らないことを言ってくれと言われたので一つだけ(笑)。最盛期の9兆円から、市場規模が減ったのを「顧客のシュリンク」と言っていたが、こういった言い訳はやめてほしいと感じる。

井芹 パソコンやスマートフォン、タブレット端末などさまざまなメディアがあるが、完全に電気がなくても読めるのは本だけだ。デジタルメディア同士は、実は現在食い合っている。しかし、紙だけはそれとは別格というポジションがあると思う。
ネットにつながりデジタル印刷することで、トランザクションコストは限りなくゼロに近づいた。日本がうまくいかないのは、組織が個人を殺してしまっているからだ。これを切り拓くのは、中小企業の力だと思っている。

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