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「JAGAT トピック技術セミナー2015」レポート① 講談社の土井副部長「出版社のデジタル印刷機導入のカギは人!」


【2015年12月10日】日本印刷技術協会(JAGAT)は12月9日(水)、東京都杉並の同協会セミナールームで「JAGATトピック技術セミナー2015」を開催した。
同セミナーはpage2016のプレイベントの位置づけで、毎年の印刷技術や製品のトピックスを旬の講師が伝えている。ここ数年はデジタル印刷関連の最新情報を中心に構成されることが多い。
同協会の郡司秀明専務理事が「このセミナーは今年1年に印刷業界で話題となった内容を集めて行うJAGATの有馬記念。近年はデジタルの話が多く、それも海外の企業も入っているのでジャパンカップ」と表現する同セミナーを数回に分けてレポートする。

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今回はデジタル印刷機を開発・販売する8社に加え、講談社販売局業務第一部の土井秀倫副部長が、国内初の出版社による本格デジタル印刷・製本の一貫ラインの導入について「日本の出版界でデジタル印刷は定着するか?講談社ふじみ野工場3年間の取り組みから」のテーマで特別講演を行った。
レポート①ではこの特別講演について触れる。

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同社ではデジタルインクジェット印刷機「HP T300 Color Inkjet Web Press」を3年前に導入。
ミューラー・マルティニの後加工機を接続し、製本までを少量で一貫生産できるようになった。
出版社は出版不況のため「売れない」⇒「企画が通らない」⇒「新しいチャレンジができない」といった悪循環に陥っているという。

土井氏は「以前、書籍の新刊は5000部程度のロットが普通だったが、出版不況で今では1500部という時もある。これをデジタルとのハイブリッド印刷活用により、より効率よく出版できるようにしたかった」「出版社のコンテンツ発信力を最大化したかった」と導入の経緯を説明した。

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デジタル印刷により、50部程度から重版できることから絶版が少なくなり、ロングテール市場を捉えられる。また、古くから持っているフィルムなどをデータ化すれば、過去の資産の再活用も可能だ。

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ただ、3年間の運用の中で、4つの問題点も見えてきた。

①標準化
文庫版や新書といっても、各社のサイズがまちまちで、シリーズごとに専用紙を使うことも多い。紙厚が違えば、背幅やカバーの設計も変わってしまう。デジタル印刷機で一貫生産するには標準化が必要となる。

②印刷用データ
印刷会社に製版と印刷の両方を発注することが普通で、出版社は版のデータ管理をしていない。また昔からの習慣で、本文と表紙を別の会社に発注していることもある。旧作はポジフィルムしかないものも多く、データ化には手間とお金がかかる。しかしデジタル印刷活用のために印刷用データは出版社主導で作成・管理する必要がある。

③クオリティアップ
クオリティ問題は編集者から理由にされやすい。実際には品質について詳しい知識を持った編集者は少ないが、問題が起こった時には「デジタルだから」と言われてしまう。600dpiではQ数の小さな文字や図版の再現性に難があり、1200dpiは必須。また、付物(カバー、表紙、オビ)などの特色表現を求められることも多い。

④事務処理
小ロット化すると印税の支払回数が増加するため、システム開発が必要となる。一方で印税の支払いは小額化するので、作家との契約・条件変更が必要になる。また、奥付の刷数は、カウントアップ回数が増えるため自動組版化するか、思い切って奥付の廃止を検討することも必要。また、部数決定と発注の回数も増えることから、この部分でも専用システムが必要となる。

土井氏は「いずれの問題にも、社内外に根強い慎重論者がいる。出版社の人間は従来型の出版にこだわりと愛着があり、今までの手順を変えるのを嫌がる。彼らを納得させるにはメリットを理解してもらうことが大切」と述べ「デジタル印刷機は、技術的に出版社の要求レベルをクリアしつつあるが、データの標準化やハンドリング、事務処理などが未解決。出版社側の問題がクリアされることがデジタル印刷定着のカギ」と結論付けた。

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